Good day ! 2
「すみません、私、こういう会話に慣れていなくて…。野中さんはたくさんの女性から告白されるのでしょうね。パイロットの制服姿も、とてもかっこいいですもの」
「いえ!とんでもない。誰からも、まったく声をかけられませんよ」
「本当に?信じられません」
「本当ですよ。職場の仲間に聞いて頂ければ分かります。いつもふざけてばかりで、彼女なんてもう何年もいなくて」

ええ?!と彩乃は、驚いて目を見開く。

「パイロットの方でもそうなんですか?」
「うっ、彩乃さん。じわっと心が痛みます」
「あ!ごめんなさい。そういう意味ではなくて」

慌てて彩乃は否定し、少し考えてから口を開く。

「実は私、野中さんのことをどう思えばいいのか、分からなかったんです」

え?と野中は首をかしげる。

「スマートに指輪を返してくださった時、とても素敵な方だなって思いました。メールを頂いた時もとても嬉しくて。お返事が来た時には更に嬉しくて、だんだん野中さんとのやり取りが楽しみになってきたんです」

野中は胸がキュッとなるのを感じた。

「でも野中さんはパイロットですもの。モテるに決まってます。女性にメールを送るのも、野中さんにとってはどうってことないのでしょう?だから私、単なる知り合いのように振る舞うしかないのかなって思っていました」
「え、あの、彩乃さん。私はそんなつもりはなく…」

今度は彩乃が、え?と首をかしげた。

野中はうつむいてゆっくり話し出す。

「彩乃さんに最初にメールする時も、送ってもいいものかどうか、散々悩みました。お返事を頂いた時は、それはもう嬉しくて。そこから更にもう一度送るのもとても迷いましたが、ここで連絡が途切れてしまうのが嫌で。彩乃さんと、ずっとやり取りしていたかったんです」
「野中さん…」
「いつの間にか、あなたからのメールが楽しみで仕方なくなりました。仕事を終えてメールをチェックして、届いていたら、もう舞い上がるほど嬉しくて。こんな歳なのに、お恥ずかしい」
「いえ、そんな…。私の方こそ、野中さんとメールをするのがとても楽しくて。他愛もない話なのに、どうしてこんなに嬉しくなるのか不思議なくらいでした。でも、実際にこうして会ってお話している今も、とても楽しいです。ちょっと照れくさくて恥ずかしいですけど…」

そう言って彩乃は頬をほんのり赤くする。
そんな彩乃に、野中はポーッと見とれた。
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