Good day ! 2
皆様、こんにちは!と、爽やかな笑顔で挨拶する倉科と、やや戸惑いながらそれに合わせる恵真の姿が流れる。

最初の方はなんとか落ち着いて見られたが、動画が進むにつれて大和の表情は険しくなった。

恵真の操縦について知ったような口ぶりの倉科に、大和の身体がカッと熱くなる。

『あはは!いや、失礼。操縦している時の藤崎さんも、素敵ですよ』

思わずスマートフォンを握る手に力が入る。

『困った表情もいいですが、藤崎さんはやはり操縦桿を握っている時が1番魅力的です。皆様、ぜひ藤崎さんが乗務する飛行機に乗りに来てくださいね!』

ついにミシッとスマートフォンが音を立てた。

「わー!佐倉さん、スマホが砕けます!」

伊沢が慌てて大和の手を止める。

動画が終わってもワナワナした様子の大和に、伊沢が声を潜めて話し出す。

「佐倉さん、もう周りに言った方が良くないですか?恵真とつき合ってる事を」
「でも倉科さんは、お前とつき合ってると思い込んでるのに、恵真を落とそうとしてるんだぞ?」
「それは相手が俺だと勘違いしてるからですよ。ペーペーのコーパイからは簡単に奪えるだろうって。佐倉さんがお相手だと分かれば、さすがに諦めると思いますよ?」
「そうは思えない。相手が俺でもあの人には関係ないよ」

すると黙って聞いていた野中が、うーん…と腕を組む。

「でもさ、抑止力にはなるんじゃないか?周りの目も気になるだろうし。もう大々的にお前は藤崎ちゃんとつき合ってるって知らせた方がいいと俺も思う」
「俺もそうしたいです。でも恵真が…。俺の職場での立場を考えたらまだ言いたくないと。そんな事はどうでもいいと言ったんですが、俺としてはやはり誰かが恵真に心ない言葉をかけるかもしれないのが心配で…。恵真はまだ20代のコーパイで、立場としては弱いですから」
「あー、確かにな。お前を狙ってる子は社内に3ケタはいる。藤崎ちゃんとの仲が知れたら、まあ面と向かって嫌味を言ったりする人はいないと思うけど、コソコソ陰口を言われたりはするかもな」
「3ケタなんて、まさかそんな」
「いーや、いる。それにお前は、機長としても我が社のホープだ。上の人達も注目するだろうな、お前がどんな相手を選んだのかって。藤崎ちゃんにしてみれば、かなりのプレッシャーだよ。でも俺はお前達のこと、お似合いのカップルだと確信してるけどね」

俺もです、と力強く頷く伊沢に、大和はありがとうと頬を緩める。

「とにかく、二人でもう一度話してみたらどうだ?」
「はい、そうですね」
「何かあったら、いつでも相談に乗るから。な?伊沢」
「はい。俺なんかで役に立つなら、何でも言ってください」
「ありがとう、伊沢。野中さんも、ありがとうございます」

大和は心からお礼を言って、二人に頭を下げた。
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