Good day ! 2
だがそれからしばらくしても、大和は恵真に話を切り出せないでいた。

相変わらずすれ違いが多く、なんとか夕食だけは一緒に食べるのだが、落ち着いて話をする暇はなかった。

(それにどう切り出せばいいかも分からない)

悩んでいる間に海外フライトもあり、気づけば時間だけが過ぎていく。

そんなある日、ブリーフィングを終えてシップに向かう途中、遥か前方に恵真の後ろ姿を見つけた。

(あんなに離れてるのに、すぐに恵真だと分かるなんて。我ながら凄いな)

妙な事に感心しつつ、人波に紛れる恵真を目で追う。

機長と並んで、時折話をしながら歩く真剣な恵真の横顔を見つめていると、ふと同じ様な視線を感じた。

(誰かが恵真を見ている?)

あちこちに目を走らせると、壁際でスマートフォンを構えている、ひょろっとした痩せ型の男に目が留まった。

何度もシャッターを切って写真を撮っている、その男の視線の先を追うと…。

(まさか!あいつ、恵真を?!)

隣のコーパイに「悪い、先に行っててくれ」と告げると、大和は壁に沿って男に近づいていった。

男が目の高さに上げているスマートフォンの画面をうしろから確認すると、ズームでアップにされた恵真が写っていた。

大和の頭にカッと血が上る。

「お客様、いかがなさいましたか?」

必死で自分を落ち着かせようと、両手をグッと握りしめながら声をかけた。

「え、あ、いや、何も」

男はしどろもどろになる。

「何かお困りでしたら、スタッフをお呼びしますが?」
「いえ、大丈夫です…」

それは困るとばかりに、男はそそくさと去っていった。

はあ、と大きく大和はため息をつく。

(やはり何とかしなければ。一刻も早く)

大和は唇を噛みしめてから、足早にシップに向かった。
< 55 / 126 >

この作品をシェア

pagetop