Good day ! 2
9月に入ってすぐ、恵真は倉科と共に上海往復のフライトを担当する事になった。

大型の台風が近づいている影響で、離発着はもちろん、巡航中も常に気を抜けない厳しいフライトになる事が予想される。

羽田を離陸したあともレーダーや計器類を常にチェックし、無事に上海に下り立つと、すぐにまた復路のブリーフィングを行う。

「最新のウェザーがこれか…。うーん、雨風どちらも強いな。視程もかなり悪い。ゴーアラウンドやダイバートの可能性がある事も、乗客にPAで早めに伝えておこう」
「はい」

返事をした恵真は、ふと倉科の様子が気になって声をかける。

「キャプテン、どうかしましたか?」
「ん?何が?」
「いえ、少し顔色が優れないような気がしまして…」
「そう?特に変わりないよ」
「そうですか。それなら良かったです」
「うん、心配ありがとう。台風の季節は気圧の変化で体調崩しやすいから、恵真ちゃんも気をつけてね」
「はい」

時間になり、二人はシップに乗り込む。

「Before Takeoff Checklist is completed」
「Roger」

離陸に向けて誘導路を移動しながら最終確認を行い、やがて管制官から離陸の許可が伝えられた。

「J Wing(ジェイウイング) 860. Wind 110 at 5. Runway 35 Right. Cleared for take off」
「Runway 35 Right. Cleared for takeoff, JW 860」

PM(Pilot Monitoring)を務める恵真がリードバックし、倉科が操縦桿を握って無事に離陸した。
< 62 / 126 >

この作品をシェア

pagetop