Good day ! 2
(なんなんだ?恵真のやつ。妙ににこにこして変な感じだったな。それにこの紙袋、なんだ?)

首をひねりながら、とにかく5階のカフェに入る。

コーヒーを注文してカウンターの席に座った。

(あ、テーブル席の方が良かったかな)

そう思って店内を振り返った時だった。

「伊沢?」

急に呼ばれて顔を上げると、入り口で驚いたようにこちらを見ているこずえがいた。

「え、こずえ?どうしたの?」
「どうしたって…。恵真と待ち合わせしてるんだけど。伊沢は?」
「俺も恵真を待ってる」

は?と、こずえは上ずった声で聞き返す。

「どういう事?」
「分からん」

二人はそれぞれスマートフォンを取り出した。

「あ、恵真からメッセージ来てる」
「俺もだ」

『こずえちゃーん。ハッピーバースデー!ごめんね、急に行けなくなっちゃったの。プレゼントは伊沢くんに渡してあるから受け取ってね。素敵なバースデーを!』

………はい?とこずえは目が点になる。

『伊沢くん、ごめん!急に行けなくなっちゃった。紙袋は、こずえちゃんに渡してくれる?』

………はい?と同じく伊沢も目が点になる。

「何がどうなってるの?」
「俺に聞かれても…。とにかく、これ」
「ああ、うん。ありがとう」

こずえは伊沢から受け取った紙袋の中から、小さなカードを取り出した。

開いて読み始めたこずえに、伊沢は、あーー!!と大きな声を出す。

「びっくりした。うるさいよ、伊沢」
「ご、ごめん!俺、すっかり忘れてて…。こずえ、今日誕生日だったな」
「いいよ、別に。私だってあんたの誕生日、何もしなかったんだから」
「え、俺の誕生日覚えてたの?」
「11月1日。ワンワンワンの日。やっぱりあんた、犬なの?」
「違うわ!」
「じゃあ、何その格好。今日は七五三?」
「違うって!」

とにかく飲み物買ってくるからと、伊沢はこずえを隣の席に促す。

「コーヒーでいい?」
「うん。ブラックね」
「知ってるよ」

伊沢がカウンターに注文しに行くのを見届けてから、こずえは恵真からのプレゼントを開けてみた。

入っていたのは、紺色のポーチとハンカチのセットだった。

どちらもゴールドの縁どりがしてあり、ワンポイントの飾りもゴールドのクロス。

シックで大人っぽい雰囲気で、フライトバッグに入れて持ち歩くのに良さそうだった。
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