復讐の鈴蘭〜最愛の婚約者が殺されました〜

毒に冒されたパーティー



 三好(みよし)乃愛(のあ)は薄暗い取調室で神妙な面持ちで座っていた。
 目の前には如何にも、といった強面の刑事が乃愛に向かって蛇の睨みを効かせている。

 そこへガチャリとドアが開き、若い男性が入ってきた。チラリと視線を向けただけで、その男の端正なルックスが目に焼き付けられた。
 まるで刑事役を演じている俳優のようだ。若い刑事を見るなり、強面の刑事が立ち上がる。


「何故お前がここに……!?」

「取調を任されましたので。望月(もちづき)さんでは萎縮してしまい、彼女が何も話してくれないかもしれませんからね」

「なんだとっ」

「上の命令だ。望月くん、ここは彼に任せてくれ」


 そう言ったのは、若い刑事の背後にいた小柄な中年刑事だった。野暮ったい雰囲気だが、射抜くような眼光は刑事そのものである。
 望月と呼ばれた強面刑事は、荒っぽく席を立つと若い刑事を睨み付けてから部屋を出る。

「任せたよ」と声をかけて、中年刑事も出て行った。


「なんであんな若造なんかに……っ」

「そう言うな。上に聞かれたらどうする。
彼はあの真田(さなだ)一族の息子だぞ」

「フン、どうせ親の七光りなんだろう」

「いや、T大法学部を主席で卒業、警察学校での成績もトップ、国家公務員試験をパスした正真正銘のエリートだよ。
容姿の良さだけでなく、頭も相当キレるらしい」

「気に食わねえな……」


 望月は吐き捨てるように呟き、大股歩きで自分のデスクに戻って行った。


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