復讐の鈴蘭〜最愛の婚約者が殺されました〜
レストランに着き、カウンター席に座る。この席に座って、圭介と出会ったのだ。
真面目に話を聞いてくれた姿、歯を見せて笑い楽しそうに話した姿が昨日のことのように思い返される。
「どうぞ。カボチャの冷スープです」
出されたスープを一口含むと、ほんのり甘いカボチャの味が広がる。スープだからか、乃愛の乾いた体にもすんなりと入った。
「……美味しい」
「よかった」
穴山はニッコリと笑った。人懐っこそうな彼の笑顔と料理の美味しさを気に入って、このレストランをよく訪れるようになり、圭介との出会いも作ってくれた。
だが、警察の話では穴山も圭介と同じカクテルを飲んでいたらしく容疑者の一人になっている。
唯一穴山だけ圭介を殺す動機がわからないが、実際のところはどうなのだろうか。
そんな風に見ていたのを気づかれてしまったのか、穴山は気まずそうに頭を掻く。
「もしかして、乃愛さんも僕のこと疑ってる?」
「えっ」
「警察の人に聞かれたから。僕が圭介くんと同じカクテルを飲んでいたから、犯人と疑われてるみたいで……」
「いえ、でも穴山さんに圭介を殺す動機はありませんよね?」
「その通りだよ。僕らは元々この店のスタッフとお客さんの関係だからね。
この店でパーティーを開いてもらったり、二次会もお邪魔させてもらったけど、プライベートで会ったことはなかったしな」