復讐の鈴蘭〜最愛の婚約者が殺されました〜

微かな違和感



 乃愛は忘れ物をしたという理由で再び圭介の会社を訪れていた。
 昨日と同じようにPCの前に座る筧瑞穂に歩み寄り、声をかける。


「筧さん、少しいいかな」

「え?」

「貴方に聞きたいことがあるんです」

「は、はい……」


 瑞穂は何度も瞬きしながら、乃愛を空いている会議室に通した。コーヒーを出そうとしてくれたが、乃愛は断る。


「率直に聞くけれど、貴方は圭介と付き合っていたの?」

「え……」

「インステに鈴蘭の花をもらったという投稿をしていたでしょう?会社の人にも鈴蘭が好きな彼氏ができたと言っていたそうじゃない」


 海野以外の会社の人にも話を聞いたところ、海野の話していたことは本当だった。その相手が圭介なのではないかと疑っていた人もいた。

 乃愛はじ、と瑞穂を見据える。瑞穂の視線は泳ぎ、明らかに動揺していた。


「えっと、それは……」

「貴方が圭介を殺したの?」

「違います!!」


 即座に否定する。


「違います!私じゃありません!圭介さんと付き合ってもいません……」

「本当に?」

「っ、圭介さんが好きだったのは事実です……」


 一瞬迷いを見せたが、瑞穂はぽつりぽつりと話し出した。


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