吸って愛して、骨の髄まで
臆病者と吸血鬼
私がこの世に存在していること自体に、吐き気がする。
今すぐここからいなくなって、私に流れる忌々しい血も、身体も…全て捨ててしまいたい。
時々…いえ、毎日そう思うわ。
けれど、忘れてはいけないのは…それを望まない人間が周りにいるということ。
だから必死に堪えて、耐えて…頑張ってきた。
私を好きだと、必要だと言ってくれる人たちのために。
それは決して、自分のためじゃない。
“自分以外の誰か”の為に、生きてきた。
でももう……疲れちゃったの。
「…こんなところで倒れても、きっと誰も気づきやしないわ」
ここは私が通う高校の視聴覚室。
もう使われていない『旧・視聴覚室』だから、滅多なことがない限りは誰も足を踏み入れることはない。
その証拠に、今までここに来るまでの経路で人を見かけたことは一度もないのだ。
部屋の隅にある戸棚から紙袋を取り出して、その中に手を入れる。
出てきたのは一つの小瓶。
サラサラとした白い粉が目一杯詰め込まれている。
…これで、楽になれるのね。
短く息を吸い込んで、瓶の蓋を開けた。
この世界にはもう、未練はない。
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