吸って愛して、骨の髄まで

でももう、ここまで来てしまったのだから後悔したって後の祭りよね。



「…それで?貴方はこんなつまらない話を聞いてどうするつもり?時間の無駄だった、なんて抜かすんじゃないでしょうね」



そう言いながら彼に視線を向けると、心外そうな顔をして「まさか」と零した。



「そんなこと言うわけないでしょ?話してくれてありがとう、薫子。辛かった…よね」



そして、私よりも苦しそうに顔を歪ませる。




…どうして、貴方がそんな顔するのよ。



「別に…もう過去のことよ」



そう…全部ぜんぶ、もう過去のこと。



今さら過去に囚われるなんて、我ながらどうかしてる。



どうか、してるわっ…。



「っ…」



視界がぼやけ、自分が泣いていることに気がついた。



塞き止めるものは何も無く、目からぼろぼろ溢れる水を拭うことしか出来ないでいたら。



「…薫子は嘘をつくのが下手だなぁ」



暖かい腕の温もりに包み込まれていた。



ムスクの香りが鼻腔を掠め、あまりの甘さにクラクラする。
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