吸って愛して、骨の髄まで
「それともやっぱり、学校近くにある喫茶店がいい?チーズケーキが美味しいって有名なんだって。薫子はどこがいいと思う?」
そんな私に気づきもせず、カフェや喫茶店に誘ってくる始末。
私のことは散々話せと言ってきたくせに、自分のことは一向に話そうとしないし。
『好きとかそういうのを全部飛び越えて…愛してるんだ、薫子のこと』
昨日のことだって…無かったことにしようとしてるんじゃないの?
そう思うと、何故だか胸が締め付けられて、無性にイライラして…。
「…貴方は、何も話してくれないのね」
どうしようもなく、哀しくなったの。
「…薫子?」
「っ…」
自分で言って後悔した。
何を言っているのだろう、と。
そう頭ではわかっているのに、ひとつ零れてしまったらどんどん溢れてきてしまう。
「だって、理央のこと…私は何も知らないじゃないっ…。そんなの不公平よ…っ」
誰かに聞かれたら不味いということだけは頭にあり、幸か不幸か、理央にしか聞き取れないくらいの小さな声が僅かに漏れた。