吸って愛して、骨の髄まで

口をモゴモゴと動かして、目を逸らしながら答える理央。



そんな彼を真っ直ぐ見据えて、私は大真面目にこう返した。



「好きなものを好きなだけじゃない。それの何がカッコ悪いのよ?」



「え…」



理央は面を食らったような顔をするけれど、構わず続ける。



「誰が何を好きであろうと、その人の勝手でしょう?人に文句を言われる筋合いなんてあるはずないわ」



「…そっ、か。…うん、そうだよね」



そう言う理央はふにゃりと笑い、今日何度目かの笑顔を見せた。



…よかった、届いたようね。



自分なりに精一杯伝えたつもりだったけど、納得してくれた様子の理央を見て安心する。



「理央はトマトジュースでも飲むのかと思ってたから、ある意味驚いたわよ?」



「えぇー?なんでトマトジュース?」



今度は理央の方がハテナを浮かべた。



「だってほら…血っぽいし、好きそうだと思ったっていうか…」



「っふ、ふふっ…薫子ってほんと面白い…っ」
< 33 / 64 >

この作品をシェア

pagetop