吸って愛して、骨の髄まで

「…薫子のぜんぶが好きだよ。薫子が視聴覚室に出入りしてた頃からずっと…薫子のことが、愛おしい」



時が、止まった気がした。



「…っ嘘。嘘よ、そんな…っ!」



自分でも驚くほど大きな声が店内に響き渡る。



っ…違う、こんなことが言いたいんじゃないのに…。



言いたいこととは違う言葉が勝手に出てきてしまう。



信じたいけれど、信じられない。



「嬉しい」、「私も好き」と心は言うけれど、頭がそれを否定する。



心に思考が追いつかなくて、私は既にショート寸前。



「…嘘って、思いたい?」



「…っ」



理央の顔が歪んで、心臓がぎゅっと苦しくなった。



違う、違うの…私は、ただ──



「理央、私──」



「理央っ!!」



え……?



私以外の可愛らしい声が理央を呼んだ。



気持ちを伝えようと振り絞った勇気は、その声によってどこかへ飛んでいく。



そして、すぐに声の主は現れた。
< 35 / 64 >

この作品をシェア

pagetop