吸って愛して、骨の髄まで
「ってか、この女だれ?彼女じゃないよね?」
「っ…!」
猫なで声とは全くかけ離れた黒い声が降ってきて、背筋が凍りつく感覚に襲われる。
だって、目が訴えているから。
“邪魔”だと。
あからさまな敵意を感じる態度に、どう接すればいいのかわからない。
なんて、返せばいいの…?
何も言えずにいるわたしにしびれを切らしたのか、「玲央奈」と呼ばれた彼女は視線を逸らした。
「…ま、いーや。もうシフト終わるから、理央に送ってもーらおっ」
「…は?いや、それは無理──」
「私、理央がいないとダメなの。ね?理央なら…わかってくれるでしょ?」
「っ…」
理央が彼女の言葉に頷いて、彼女はニコリと嬉しそうに笑う。
苦しそうにしている理央と、軽い足取りでバックヤードに戻っていくあの子。
対照的すぎる二人を前に、私は一言も発することができなかった。
結局その日は、理央のことなど何も聞けずじまいで。
腕を組んで去っていく美男美女と、一口も口にすることが無かったパフェを思いながら帰路に着いた。
不思議と、涙は出なかった。