吸って愛して、骨の髄まで
お父さんはあまり笑わないけれど、いつも私のことを思ってくれているというのがとても伝わってくる。
絶対に私の目を真っ直ぐに見て話してくれるからかもしれない。
顔を洗い終わってもう一度リビングに戻ったら、お父さんとお母さんが同時に私を見てた。
「…どうしたの、二人とも…私、何か変?」
「…ううん、なんでもないわよ?」
「たまたまだよ。たまたま」
「……」
気づかれている。
私の様子がおかしいことに、二人はもう気づいてるのだ。
お母さんは答えるまで変な間が空いたし、お父さんは同じことを二回繰り返す時はたいてい嘘をついているもの。
私にバレないはずがない。
なのに、何も聞いてこないのはきっと…。
「薫ちゃん、そのジャムどうかしら?お父さんが出張のお土産で買ってきたのよ。美味しい?」
「うん、すごく美味しい。お父さんありがとう」
「薫子が好きそうだと思ったんだ。口にあって何よりだよ」
“当たり前の日常”を、私が何より大好きだと知ってくれているからだ。