吸って愛して、骨の髄まで
人生を捨てようとしていたあの朝は、今日みたいに暗く沈んだ気持ちではなかった。
たしかに、私がこの場所にいることを私自身が許せなかったけれど…二人は、許してくれたから。
辛くなかったし、苦しくもなかったのだろう。
でも…今は、あの頃とは違う苦しみが私を襲っている。
きっと、二人は私が何か言ってくるまで聞いてこない。
それは、私に無関心だからとかそういうものではなくて。
…“信じてくれている”からなのよね。
無償の愛を与えてくれて、私に家族の温かさを教えてくれた大好きな人たち。
そんな二人に、私も同じものを返したいと心から思う。
「ごちそうさまでした。私はそろそろ行くね」
席を立ち、食べ終わった食器を片付けてから二人に聞こえる声でそう言った。
そして、私なりの精一杯の笑顔を浮かべる。
「…お父さん、お母さん。いつもありがとう。行ってきます!」
カバンを手に取り、言い逃げるように玄関の扉を開けた。
もしかしたら何か聞かれてしまうかもしれないと思ったからそうしたけど…。