吸って愛して、骨の髄まで
「余計に心配させてしまったかしら…」
外に出てから後悔する。
それでも、今、無性に伝えたくなったから…それでいいのだと思うことにした。
「薫ちゃんも、すっかり大人になったわねぇ…」
「でもまあ…俺たちにとっては、まだほんの子供だけどな」
「あらやだ、お父さんったら泣いてるの?」
「な、泣いてなんかないさ…!」
「ふふっ、もう〜素直じゃないんだから」
私がいなくなったリビングで、そんな会話が繰り広げられていたことなど知る由もない。
*
「薫子、ちょっとこっち来て」
「え?翼?ちょっ、引っ張んないで…!!」
教室に着くや否や、制服の袖を引っ張って私を連れ出そうとする翼。
一体なんなの…!?
理由も話さず無言を貫く翼に、戸惑いを隠せない。
学校に来るまでは理央のことで頭がいっぱいだったのに、今はそんなことを考える余裕もなく。
「ねぇ、ちょっと翼…!?いきなりどうしたのよ…!?」
私を見るなり意味のわからない行動をとる親友の方が、何百倍も心配だ。