吸って愛して、骨の髄まで
翼の怒りを、瞬時に察した。
「御影が吸血鬼とか、玲央奈って子が凄い可愛い子だとか、心っ底どうでもいいけどさ!」
初めて聞いたであろう、怒りをあらわにしている感情のこもった声が脳天に響く。
「っ薫子がいなくなるだなんて、私が絶対許さないから!!」
「…っ!」
その怒りは、これ以上ないくらいの”愛“だった。
「薫子がそんなこと思ってたなんて全然気づかなかった。それが、悔しい。毎日一緒にいたのに…っ」
目から零れ落ちた涙が頬を伝って、ぽたぽたと地面に落ちていく。
震える翼を引き寄せて、ぎゅっと強く抱き締めた。
「翼…ごめんなさい。でも、もう大丈夫よ。翼をこれ以上悲しませたくないもの」
「うぅ〜っ、約束だかんね!?破ったら針千本どころじゃなくて、百万本飲ますから!!」
「ひゃくま…えぇ、約束するわ」
嗚咽をあげながら泣く翼の背中をさすり、強く頷く。
結局私たちは、二限目が終わるまで授業をサボって移動してきた屋上にいた。
そして、翼が泣き止んだ頃。
「あれ…もしかして、御影じゃない?」
「っ!」