吸って愛して、骨の髄まで

心の底から、誰よりも side理央


「ねぇ理央?明日も一緒に登校してくれるよね?」



猫なで声を出して僕の腕に絡みつく彼女は、小鈴玲央奈。



「ちょっと、聞いてる?」



気分の浮き沈みが激しく、相手によって態度を変える。



自分の思い通りにいかないと駄々をこねるような我儘っぷりは、昔から相変わらずだ。



「…もうやめよう、玲央奈」



「…は、何言ってるの理央。私がどうなってもいいわけ?」



今いる場所は玲央奈のマンションの入口前。



玲央奈の声がワントーン下がった。



…その手は通じないよ、玲央奈。



今までだったら、きっと彼女の望むままにしていただろう。



でも…僕には愛してやまない人がいる。



玲央奈を避けるのに、それ以外の理由など必要ない。



「これ以上一緒にいたって苦しいだけ。本当は気づいてるんでしょ?」



「っ…」



玲央奈は顔を酷く歪ませ、伏せるように俯いた。



“あの頃”から俯くことを良しとしなかった従姉妹が、泣きそうな顔で歯を食いしばっている。



そう…小鈴玲央奈は、僕の従姉妹にあたるのだ。
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