吸って愛して、骨の髄まで


帰り際「明日だけは一緒にいて」とあの表情で言われてしまったため、仕方なく了承した。



正直、長く続いたこの関係に終止符を打つ事が出来てほっとしている。



帰路に着く僕の口から、小さなため息がこぼれたのがその証拠。



薄情かな?でも…これは紛れもない本音。



だって、玲央奈は僕に依存していたから。



玲央奈が僕を、異性として「好き」だと言ってきたことは今までで一度もない。



甘えた声で触れてきたりなんてことはよくあったけど、本当にそれだけ。



僕に告白してくる子たちとは、視線も言葉も何もかもが違うんだ。



そして…そういう風にしてしまった原因は、他の誰でもない僕にある。



日が沈み、夕日が傾くのを見届けながらふと昔のことを思い返した。



『…みんなね、玲央奈のこと嫌いなんだって』



俯き気味で、背中を丸めながら。



『理央兄も…玲央奈のこと、嫌い…っ?』



小学一年生の小さな身体を震わせて、目に涙をいっぱい溜めたまま聞いてきた。



一つ年上である僕の庇護欲が、初めて湧いた瞬間だったと思う。
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