吸って愛して、骨の髄まで
それならこのまま聞き返されずに、この場を逃げた方がよっぽどマシだわ。
これからここをどう切り抜けるかを考える方が得策…。
「っえ?な、に…」
思考を切りかえて次はどう動くか考え始めていたら、頬に彼の手のひらが落ちてきた。
そして、ゆっくり口を開いてこう言った。
「僕が、薫子に惚れちゃったからだよ。もう、薫子が好きで好きでたまらないんだ」
熱の篭った声と視線。
その全てが向けられているのは、紛れもなくこの私で。
「っ…!?」
「ふっ…薫子の顔、すっごく真っ赤。林檎みたいで…美味しそうだね?」
「っ〜!!」
触れられた頬が熱くて、恥ずかしくて…どうにかなってしまいそうだった。
この男が本当に吸血鬼と言うのなら、それはきっと何かの間違い。
獲物を狩りとろうと目をギラギラ光らせる、凶悪なオオカミの方が絶対合ってる。
こんな男に好かれる理由なんて、何一つないわ…!
このままいたら食べられてしまいそうで、彼の胸板を必死に押し返す。