吸って愛して、骨の髄まで
「じょ、冗談言わないで…!私のことなんて、なにも知らないくせに…っ!」
「だから言ってるんじゃん。まずはお互いのことを知るべきだよ。話はそれから」
「必要ないのよそんなもの…!だいたい貴方に話す義理なんてな───」
「なら作ろうか。その義理ってやつを…今、ここで」
彼は言葉を遮り、頬にあった手のひらを滑らせて私の髪の毛をサラリと持ち上げた。
「な、なに言って──…っ!」
ハッとした時にはもう、遅かった。
首にチクリとした痛みが一瞬襲い、柔らかい何かが押し当てられている。
「…っな、にを…してるの…っ?」
「……」
返事はない。
その代わり、彼の方からごくごくと喉越しが伝わってくる。
ただわかるのは、首に感じる僅かな痛みと。
「…美味しかったよ、薫子。ごちそーさま。これで晴れて契約ができるよ」
彼が…御影理央が、吸血鬼だということだけだった。