鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


「いっくん、大丈夫?」
「……ん、何とか」

伊織のマンションに帰宅した二人。
普段では酒にのまれることがない伊織でも、さすがに緊張したようで、少し酔っているようだ。

栞那に支えられるようにして帰宅し、リビングのソファに倒れ込んだ。

「いっくん、ありがとうね」
「……ん?」
「いっくんのお陰で、両親ともちゃんと話せたから」
「……ん」

食事をしながら、これまでの行き違いのような気持ちを吐露できた栞那。
離婚という形は修復できないようだが、離婚しても栞那の両親には変わりない。

「栞那」

伊織は栞那の手をぎゅっと掴んだ。

「俺に、両親を与えてくれてありがとう」
「っ……」
「栞那の両親は、俺の両親でもある」
「……ん」
「大切にするよ」
「うん」

伊織にとって栞那との結婚は、新しい家族が増えることを意味している。
これまで味わえなかった家族の時間が、新たに紡ぎ出されることになるのだから。

「んっ……っ…」

栞那の手を引き寄せ、抱き締める。
酒のお陰で体が火照り気味の伊織の手が、セーターの裾から滑り込む。

「……かんちゃん」
「っっ……」

伊織の熱い視線が栞那に向けられる。

「もうっ、早速使うとか、狡いッ」
「別にいいだろ」

伊織が“かんちゃん”と呼ぶ時、……甘えたいと意思表示したことを意味する。

「はい、バンザーイ」
「……っ」

伊織はセーターの裾を捲り上げ、有無を言わさずに栞那のセーターを剥ぎ取る。

「おっ、今日はコレなんだ」
「っっ~~っ、そんなジロジロ見ないでよッ」
「いいだろ、俺しか見てないんだから」

白地に黒い総レースのランジェリー。
あるようでない珍しい色使いのセットだ。

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