鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
彼と専属契約をするようになった直後から、発売済みのものから企画段階のものまで、“試着”と称してランジェリーやルームウェアを身に纏い、それらは無条件でプレゼントされた。
“試供品”という名の贈り物だけれど、今なら分かる。
それらは、ただ単に試着させたくて着せたのではなく、私に会うための口実だったのだと。
伊織の視線が栞那の胸元に落とされる。
「さ、最近は試着してないけど、いいの?」
「ん?……あぁ、今は別部門のデザインをしてるから」
「そうなんだね」
伊織の視線を逸らさせようと話題を振るものの、いとも簡単に阻まれる。
「フフッ、俺に下着姿、見られたいの?」
「べっ、別にそんなんじゃっ」
「試着じゃなくても見たいし、俺はその下の中身が見たいけどね」
「っっ~~ッ」
しかも、心の内を読み解いてる彼は、甘美な声音で耳元に囁く。
そして、いつもより少し熱い伊織の手がスーッと栞那の肌を這い上がる。
「なぁ」
「……ん?」
「シャワー浴びたいんだけど」
「え?……ん、浴びて来ていいよ?」
「……かんちゃんも一緒に」
また“かんちゃん”って。
そんな格安セールみたいに連発しないで。
「……むっ、無理ッ!」
「何で?」
「なっ、……何でもッ!!」
「いいだろ、今さら」
「……無理無理無理っ」
「ケチ」
「ケチでも何でもいいけど、無理なものはムリッ!」
「……もしかして、彼氏と入ったことないの?」
「っ……あるわけないでしょっ」
「マジで?」
「そんな深い付き合いとか、長い付き合いとかしてないよっっっ」
「―――はぁぁぁ~~~っ」
「なっ、何でいっくんが溜息吐くのよっ」
「っ……、溜息なんじゃなくて、安堵だよッ!過去の男に嫉妬したとこで意味ないのは分かってるけど、やっぱり嬉しいだろ。栞那の初めては特別だから」
「っっっ~~~~っ」
羞恥で赤くなる私と同じくらい、彼も赤らめていて胸がぎゅっと苦しくなる。