鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
*
「味噌汁とすまし汁ならどっちがいいだろう……?」
仕事を終え帰宅した伊織は、栞那のために海鮮ちらし寿司を作った。
浅漬けと和え物も手早く仕上げ、後は汁物を用意するだけ。
出汁は取り終わっていて、鍋に視線を落とし眉根を寄せる。
「やっぱり、味噌かな。白味噌好きだって言ってたし」
ブツブツと独り言を口にしながら、冷蔵庫からかぶと里芋、それと油揚げを取り出し、味噌汁を作り始めた。
半月ぶりの彼女との食事。
一本電話でもかければ、たぶん食事くらいはいつだって出来たはず。
彼女からも連絡が一切来なかった理由は何だろう?
俺と同じ理由だろうか?
元々恋愛に前向きでない彼女だから、連絡が来ないならそれでもまぁいいか的な感じだった。
けど、やっぱりショックでもある。
ただ単に仕事が忙しかったら、余裕がなかったんだと、そう自分自身に思い込ませていた二週間。
二十年近く会わなかった日々をどう過ごしていたのか、もう思い出せない。
すぐ傍にいるという安心感で、感情を押し殺すというスキルが完全解除されてしまったようだ。
*
「こんばんは、お邪魔します」
「遅くまでお疲れ様。……おかえり」
「っ……、ただいま」
スーツ姿の栞那は脱いだヒールを端によけ、少し疲れた表情で微笑んだ。
「夕飯作ってある。食べるだろ?」
「うん、もちろん!手、洗って来る」
「シャワー浴びてくれば?」
「え?」
「泊ってくんじゃないの?」
「あ、……そうだね、じゃあ、泊ってく」
彼女の荷物はそのままにしてある。
ハウスキーピングは隔日で入っていて、栞那の荷物には触れないようにして貰ってある。
「味噌汁とすまし汁ならどっちがいいだろう……?」
仕事を終え帰宅した伊織は、栞那のために海鮮ちらし寿司を作った。
浅漬けと和え物も手早く仕上げ、後は汁物を用意するだけ。
出汁は取り終わっていて、鍋に視線を落とし眉根を寄せる。
「やっぱり、味噌かな。白味噌好きだって言ってたし」
ブツブツと独り言を口にしながら、冷蔵庫からかぶと里芋、それと油揚げを取り出し、味噌汁を作り始めた。
半月ぶりの彼女との食事。
一本電話でもかければ、たぶん食事くらいはいつだって出来たはず。
彼女からも連絡が一切来なかった理由は何だろう?
俺と同じ理由だろうか?
元々恋愛に前向きでない彼女だから、連絡が来ないならそれでもまぁいいか的な感じだった。
けど、やっぱりショックでもある。
ただ単に仕事が忙しかったら、余裕がなかったんだと、そう自分自身に思い込ませていた二週間。
二十年近く会わなかった日々をどう過ごしていたのか、もう思い出せない。
すぐ傍にいるという安心感で、感情を押し殺すというスキルが完全解除されてしまったようだ。
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「こんばんは、お邪魔します」
「遅くまでお疲れ様。……おかえり」
「っ……、ただいま」
スーツ姿の栞那は脱いだヒールを端によけ、少し疲れた表情で微笑んだ。
「夕飯作ってある。食べるだろ?」
「うん、もちろん!手、洗って来る」
「シャワー浴びてくれば?」
「え?」
「泊ってくんじゃないの?」
「あ、……そうだね、じゃあ、泊ってく」
彼女の荷物はそのままにしてある。
ハウスキーピングは隔日で入っていて、栞那の荷物には触れないようにして貰ってある。