鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


「失礼します」

出張から戻った翌日の十八時過ぎ。
秘書の三井に連れられ、新契約したモデルの相川(あいかわ) ありさ(二十六歳)が、社長室に現れた。

「どうぞ、お掛け下さい」
「ありがとうございます」

現在独占契約しているモデルのYu@(ゆあ)に大河ドラマのオファーが入り、暫くモデル業を休止したいと申し出があった。
その対応として、同じ事務所の人気モデルありさを抜擢することとなった。

ありさはアメリカ人の父親と日本人の母親を持つハーフだということもあり、日本人離れした八頭身の容姿と色気のある美貌を兼ね備えている。
男性に人気なのは当然だが、最近は若い世代の女性にも人気で、彼女を起用したCMの好感度は右肩上がり。

「社長の久宝です」
「相川 ありさです。Yu@ちゃんのようなフレッシュ感はないですが、一生懸命頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします」
「こちらこそ、期待してますよ」

四月からの契約ということもあり、今日は簡単な挨拶だけしにやって来た。

「困ったことがあったら、秘書に連絡頂ければ、対応しますので」
「分かりました」
「では、今日のところはこれで」
「はい」

ありさが席を立つ。
三井が社長室のドアを開け、外へと促した。

「社長、この後すぐに会食先に向かわないとならないので、エントランスへ」
「分かってる」

三井を追うように席を立ち、会食先へと向かうことに。
エレベーター待ちのありさと三井と合流し、到着したエレベーターに乗り込んだ。

一階に到着したエレベーターのドアが開き、三井がありさを先に降ろそうとした、その時。

「キャッ」

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