鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
*
「山下くん、本当に直帰してよかったのに」
「いえ、明日〆切のやつがまだ終わってないので」
「労務の?」
「はい。追加しただけで、まだ穴あけしてないので」
「手伝おうか?」
「いや、杉山さんにお願いしてるので大丈夫です」
「そっか。何かあったら遠慮なく言ってね」
「いつもありがとうございます」
出先から会社へと戻り、部署の子たちに飲み物を買って来た栞那は、SEの山下と共にエレベーター待ちをしている。
「そう言えば、杉山くんの結婚式、六月の第三土曜日だったよね」
「はい」
「三か月切ってるから、今から着て行く服探さないと」
「部長もそういうの気にするんですか?」
「そりゃあ気にするよ。場違いな恰好してる上司って、言われたくないもん」
「え?……アハハッ、部長って本当に面白いですね」
「へ?」
「いや、今のとこは、綺麗に見られたいとか、若く見られたいとかじゃないんですか?」
「あ……まぁ、そういうのもなくはないけど」
女子力が極端に低い栞那は、男性にこう見られたいという意識が低すぎる。
結婚式だからと、素敵な人に出会いたいだなんて思ったこともない。
「ま、部長には、素敵な恋人がいますもんね」
「………っ」
山下に非公開の情報を知られている栞那は、苦笑するしかなかった。
「あっ、来ました」
ポーンッと到着を知らせる音が鳴り、エレベーターのドアが開いた、次の瞬間。
栞那の視界に映ったのは、伊織がスレンダー美女を抱き締めている姿だった。
「山下くん、本当に直帰してよかったのに」
「いえ、明日〆切のやつがまだ終わってないので」
「労務の?」
「はい。追加しただけで、まだ穴あけしてないので」
「手伝おうか?」
「いや、杉山さんにお願いしてるので大丈夫です」
「そっか。何かあったら遠慮なく言ってね」
「いつもありがとうございます」
出先から会社へと戻り、部署の子たちに飲み物を買って来た栞那は、SEの山下と共にエレベーター待ちをしている。
「そう言えば、杉山くんの結婚式、六月の第三土曜日だったよね」
「はい」
「三か月切ってるから、今から着て行く服探さないと」
「部長もそういうの気にするんですか?」
「そりゃあ気にするよ。場違いな恰好してる上司って、言われたくないもん」
「え?……アハハッ、部長って本当に面白いですね」
「へ?」
「いや、今のとこは、綺麗に見られたいとか、若く見られたいとかじゃないんですか?」
「あ……まぁ、そういうのもなくはないけど」
女子力が極端に低い栞那は、男性にこう見られたいという意識が低すぎる。
結婚式だからと、素敵な人に出会いたいだなんて思ったこともない。
「ま、部長には、素敵な恋人がいますもんね」
「………っ」
山下に非公開の情報を知られている栞那は、苦笑するしかなかった。
「あっ、来ました」
ポーンッと到着を知らせる音が鳴り、エレベーターのドアが開いた、次の瞬間。
栞那の視界に映ったのは、伊織がスレンダー美女を抱き締めている姿だった。