鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

左手が震える。
不釣り合いなほど豪華すぎて。

「これ、凄く高かったでしょ」
「そうでもないよ」
「嘘っ、絶対高いよ」
「栞那はそんなこと、気にしなくていいんだよ」
「っ……」

世界五大ジュエラーの一つとして数えられ、ニューヨークの五番街に本店を構える高級ジュエリーブランド。
女性の憧れでもあり、一度は手にしてみたいと思う夢のブランドだ。

しかも見るからに中央に収まっているダイヤモンドは、一カラットアップした大粒で、両サイドにバゲットカットした大粒のダイヤがあしらわれている。

「傷つくからって仕事中外したり、流しそうだからってお風呂の度に外すなよ?」
「えっ?」
「栞那の考えそうなことくらい、お見通しなんだよ」
「っ……」
「外してるところ見たら、お仕置きな」
「っっっ」

ニヤリと薄い唇の端が持ち上がる。
先手を打たれたら、もうどうにもできないじゃない。

「お義父さんから、結納は要らないって言われてたんだけど、栞那は良かったのか?」
「あ、……うん」
「ごめんな、気を遣わせて」
「そうじゃないよ。形式に拘らなくてもいいと思ったの」

彼にはご両親がいない。
実際はいるんだけど、『両親』と呼べるような関係性ではないため、『結納』という形に拘りたくなかった。

母親にそれを話したら、父親に伝えてくれたみたい。
父親から『二人が幸せなら、それでいい』とメールが来た。

いっくんほどではないけれど、私も父親との間に深い溝があったから。
彼と再会したことで、関係性が修復できたようなものだ。

「ここに住むか?それとも、広い所に引っ越すか?」
「え?」

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