鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

栞那に漸く指輪を渡せた。
本当はもっと早くに渡したかったんだが、仕事が忙しくてデートもままならず。
完全に渡すタイミングを取り逃がした。

恐縮するような表情の彼女。
普段アクセサリーらしいものを殆どつけないのもあるだろう。
指輪の存在感がかなりある。

だが、それが狙いだ。
他の奴らに見せつける意味で。
要らぬ噂を打ち消すためにも、邪な考えを抱いてる男を寄せ付けないためにも。

住む家をどうするか、早いところ決めないと。
今住んでるこの家でも間取りには余裕があるけれど。
彼女が住みたいと思う家に引っ越したって構わない。

いや、土地を買って建てるという手もあるか。

「ここで十分だよっ!会社からも近いし、部屋も余ってるし」
「いいのか?」
「もちろん。むしろ、ここに住まわせて貰うのだって申し訳ないのに」
「は?何で。俺の妻なんだから、一緒に住むのは当然だろ」
「そうだけど…」
「まさかとは思うけど、結婚したけど、社内では秘密にするとか言わないよな」
「え?……ダメなの?」
「はぁぁぁぁああぁぁぁ~っ」

どういう思考回路してんだよ。
仕事は仕事、プライベートはプライベートだと区別したいのも分かるけど。
俺の立場を考えろよ。

「夫婦同伴の会食だとかパーティーのようなものも多いから、必然的に非公開にするのは無理だぞ」
「あ……そっか」
「この間のは非公式の新作ショーだったけど、メディアの前に立つ機会も当然ある。というか、今さらやっぱり結婚やめるとか言うなよな。たぶん、もう三井が名刺手配してると思うし」
「………」

蒼ざめる栞那を見据え、不安が募る。
ここまで来て、リセットしたいだなんて聞けるわけがない。

< 148 / 156 >

この作品をシェア

pagetop