鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

体中に降り注ぐようにキスのシャワーを浴びる。
柔らかい彼の唇の感触と私の体温より僅かに高い熱を感じて。

スクエアネックのAラインのチュニックの裾から彼の手が滑り込んで来た。

「怖いのか?」
「……だ、大丈夫」

緊張のあまり体が震える。
行為自体が怖いんじゃなくて、彼のご所望に応えれているか不安で。

こんな攻めたようなモノ、身に着けたこともないから、緊張しないはずがない。

「えっ……」
「………っっ」

バレたようだ。
直に触れたら絶対にバレる。

だって、かなりエロティックなベビードールはブラジャーがセットになってなくて、今は完全にノーブラ状態なのだから。

「もしかして、さっき区役所行った時も、この状態?」
「………うん」
「マジか……」

右胸を覆った彼の手が、静かに止まった。

「コート着てたし、言わなきゃ誰も分からないよ」
「っ……そうかもだけど」

スッと引き抜かれた彼の手。
その手はがしっと肩を掴んだ。

「今度からは俺と二人きりの時以外、ノーブラ禁止な」
「……ん」
「ホント、分かってる?」
「分かってるよ」

彼が嫉妬してくれたのだということが嬉しくて。
会社では飄々とした雰囲気なのに、素の彼はちょっと愛くるしさもあるほどお茶目なところもある。
指輪を渡しそびれたり、再会の機会をおかしな理由をつけて無理やり仕組んだり。

大きな会社を経営してるだけあって、しっかりした部分も多いけれど。
私の目には二十年前の無垢な彼のシルエットが重なる。

ピッ。

「んっ?」
「俺ら、もう夫婦だし、遠慮なく見させて貰う」
「ふぇっ?!!」

寝室の照明が付けられ、明るくなった室内で彼の視線が注がれる。
そして―――。

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