鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


愛おしむように頭を優しく撫でられる感覚を感じて目を覚ますと、視界には大好きな彼がいた。

「起こしたか?」
「……寝てないの?」
「いや、寝たよ」

彼のベッドで朝を迎えるのは初めてじゃないのに、何故か『初めて』だと錯覚するほど恥ずかしい。
色気のある声音が耳元に届き、昨夜のことを思い出してしまった。

あんな風に求められるとは思ってもみなくて。
自分があんなにも乱れてしまうなんて……。

「どうした?」
「っっ……」
「昨夜のを、思い出した?」
「っっ~~っ」

わざとらしく煽るように耳元に呟かれる。
あまりというか、基本好きではないあーいう行為で、何度も何度も意識を手放すほど高みを極めることなんて無かったから。

一晩中解放して貰えず、体の隅々までまだ彼が触れている感覚が残ってる。
視線をちらりと腕に落とした、その時。

「ッ?!!!」

嘘っ。
何、これ。
いや、まさか……。

掛け布団を恐る恐る捲ると、腕だけでなく、肩や胸、お腹や腰、脚に至るまで鬱血痕が恐ろしいほどに刻まれている。

確かに最中に付けられている感じはあったけど、こんなにも多かっただなんて。
今さらながらにどう対処していいのかすら分からない。

こんなにたくさんのキスマークなんて、付けられたこともないのに。

おずおずと視線を持ち上げると、不敵に微笑みながら細長い指先が首筋をツーっと撫でる。

「足りない?」
「っっっ…」

いっくんって、こういう人だったの?!
もっと淡泊でクールな人だと思ってたのに。
こんなにも独占欲を剥き出しにするような人だっただなんて。

「今何時?」
「六時過ぎたところ」
「かっ、会社に行く用意しないとッ」

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