鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

無理むりっ!
甘い朝チュンだなんて、二次元の世界だと思ってた。
こんな風に熱い視線を向けられて、大好きな彼の腕の中で甘い朝を迎えるだなんて思ってもみなかった。

そりゃあ入籍したんだから、こういう朝があるのは分かってたけど。
想像していた以上に恥ずかしすぎるっっっ。

どんな顔をしたらいいのか分からない。
なんて話しかけていいのかすら分からない。

逃げ出すようにベッドから出た、その時。

「きゃっ……」
「おいっ、大丈夫か?」
「………っっ」

足をついて立ち上がろうとしたら、腰が砕けて膝がカクンッと崩れて立てなかった。
床に崩れ落ちた私は、恥ずかしさで硬直した。

「ごめん、手加減してやれなかったから」
「っっっっ」

体に全く力が入らない。
瞬時に再び昨夜のことが蘇る。

「今日、休むか?」

ひょいっと抱き上げられ、ベッドの上に下ろされた。

「新年度用の追い込みがあるから、休めないよっ」
「じゃあ、俺と一緒に出社すればいい」
「……」
「いい加減、覚悟しろ」
「……ん」

もういい加減覚悟しないとダメなのは分かってる。
後戻りは出来ないということも。

「では、……お願いします」
「ん」

ポンポンと頭を撫でられた。

「朝食の用意して来るな」
「……ありがと」
「もう少し休んでていいよ」

微笑みと共に優しく一撫でされる。
こんなに幸せな朝が来るだなんて。
この甘美な心地が、この先ずっと続くのかと思ったら幸せすぎて。

「んっ」

腰を上げた彼に抱きついた。

「好き、大好きっ」
「っっ……やっぱ、無理ッ」
「っんッ…」

ボフッと押し倒された。
えぇぇえええぇぇっっっ!!

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