鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

そう言えば、この前も言ってたっけ。
パソコンのモニターに張り付くみたいに前屈みになって猫背になっていた時、『長時間そういう姿勢でいると、垂れるよ』と。

彼の頭の中には、ランジェリーのことしかない。
常に如何に美しく着こなせるか。
そのためにどうやって体型を維持するのか。
彼の作品をより引き立たせるために、身も心も最高の状態にしろということだ。

けれど、こんな風にお腹いっぱいになるほど食べてしまったら、下着姿を披露するなど羞恥の極み。
空腹の時でさえ、人様に見せれるような体をしていないのに……。

「脱いだところを見たら、幻滅しますよ?」
「裸になるわけじゃない」
ほぼ(・・)裸です」
「自信が無いのか?」
「当たり前ですっ!社長のお相手をするような美女集団の方と一緒にしないで下さいっ」
「フッ、……面白いことを言うな」

笑う口元を手で隠し、肩がクククッと小刻みに揺れる。

「大丈夫だ」
「……何がですか?」
「俺が見たいのは、お前のランジェリー姿だけだ」

妖艶な視線が栞那に向けられる。
その瞳に私がどう映っているのか分からないけれど、私はモデルじゃない。
システムをつくり出すエンジニアだ。

“思ってたのと違う” “やはり素人だからか”
きっとそんな風に思うに違いない。

それでも、『いい女だと思ったのに、見た目だけなんだな』この言葉が胸の奥に突き刺さっているから。
きっと社長もそういう私を気に入ってるだけだ。

栞那は大学時代に付き合っていた彼氏からの言葉を思い出していた。

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