鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

数日後。

「木川田さん、今日は無理言ってすみません」
「いえいえ、僕の方こそ、いつも無理言って急ぎの案件対応して貰ってますので」

撮影現場が会社から意外と近いということもあって、今日は部下二人を連れて現場を訪れている。
今日は自社サイトの広告用のスチール撮りらしい。

大きな倉庫内に幾つかのブースに分かれ撮影用にセッティングされ、部門別に撮影ができるようになっているようだ。
現場は慌ただしくスタッフが往来している。

「あ、Yu@(ゆあ)ちゃん!」

Webディレクターの国分(こくぶ) (あい) 二十五歳が、スタッフと楽しそうに会話しているモデルのYu@を見つけた。
読者モデルからプロのモデルとして成長したYu@は、Bellissimoのモデルをするようになって知名度が一気に上がった。
最近ではドラマや映画にも出演するようになり、活動の場を広げている人気モデルだ。

「モデルさんを間近で見ると、やっぱり違いますね」
「そうですね~。女優の来栖(くるす) (みなと)がいる時は、現場がもっと華やかになりますよ」
「いいなぁ~、一度でいいからみーな(湊の呼び名)をこの目でみたいです~」

Webデザイナーの近藤は目を輝かせながら、Yu@の姿を眺めている。

「奥でメンズの撮影してると思うので、良かったら…」
「あ、はい。近藤さん、国分さん、メンズの撮影見に行こう」
「はい」
「メンズって、もしかして長谷(はせ) 泰弥(たいや)?」
「あ、そうです、そうです!」

長谷 泰弥 二十五歳、日本代表にもなっているプロのサッカー選手だ。

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