鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「付き合ってはいない。……ちょっと個人的なことで会っただけなんだけど」
「……そうなんですね」
一応、否定はしておくべきだよね。
社長という立場もあるし、一社員を助手席に乗せているだけでも問題だろうから。
「凄くいい雰囲気だったので、素敵だなぁと思ったんですけど。社長があんなにも自然に笑ってるのを見たいことがないので」
「っ……」
国分さんの言葉に、社長の笑みを思い出してしまった。
先日のあの日以来、社長の様子ががらりと変わった。
自社ビルの駐車場を出るまでは社長としてのオーラを放っているが、駐車場を出た途端、甘い顔をする。
それは、車内でもレストランでも自宅でも。
“愛撫”だなんて口にするけれど、あのイケメンフェイスが急接近して来るだけでも心臓に悪い。
「ちょっとした知り合いみたいな感じなんだけど、会社では上司と部下だから」
「……そうなんですね」
普段は無口な国分さんが、初めてと言っていいほどに饒舌に話す。
「国分さんは彼氏いるの?……って、これセクハラになるか」
「いえ、大丈夫ですよ。彼氏はいませんけど、ボーイフレンドなら何人かいます」
「え?」
「セフレってやつです。この仕事してると、恋愛に時間割くのが難しいですから」
「っ……」
驚いた。
国分さんって、こういう子だったの?
元々はっきりしてる性格だとは思っていたけど、単に男性社会に慣れているだけかと思ってた。
けれど、変に裏表があるわけじゃないから、こういう性格の人は嫌いじゃない。
「今度、飲みにでもどうですか?部長とは話が合いそうなので」
「へ?……あっ、うん、喜んで」