鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

Bellissimoの十二月は歳末セール、一月は初売りフェアが行われ、各部門のセール品情報は目まぐるしく変動し、欠品が相次ぐものもあれば、売れ行きが悪いものもある。
商品情報を分かりやすく上書きしたり、トップページからワンクリックで移動できるように工夫したり。

簡易的な変更ならば各部門でも対応できるが、売り上げに比例するように変更依頼も急激に増える。

一日に数回あるタイムセールでは、開始直後にサーバーへの負担が激しく、常に緊張と隣り合わせ。
オペレーション課のスタッフがPC入力すると、度々フリーズしてクレームの嵐に襲われる。

「山下くん、今夜残業できそう?」
「あ~~はい、いいですよ」
「ごめんね?ちょっとフォローお願いしたいんだけど」
「分かりました」

一件もクレームが出ないのが当たり前であって、クレームが起きてから対応するのはナンセンス。
それぞれの部署でも忙しさに追われてるんだから、うちの部署だって忙しく当然。

「私も残りましょうか?」
「え、……いいの?」
「はい、今日は予定ないので」
「じゃあ、お願いしようかな」

国分さんが自ら声をかけてくれた。
一人でも多い方が助かる。



「山下くん、フロントエンド(Webサイトなどでユーザーが直接目にする部分のこと)をもう少し改良できる?」
「やってみます」
「国分さん、今データ送ったから、デバックして貰える?」
「はい」

比較的簡単な作業を国分さんに割り振り、自分は三十分ほど前に起きた箇所のロールバック処理(システム障害やデータの喪失、破損などが起きた際に、処理した結果を取り消しながら、障害前の状態にまで戻ること)を行う。

「まだかかりそうか?」

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