鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「山下さん、部長のことが好きですよね」
「っ……、別に、好きってわけじゃ…」
「そうですか?……別にお互いに独身なんだし、私はいいと思いますけど」
会社から駅へと向かう途中、突然国分が山下に鋭い質問を投げかけた。
「好きって言うより、尊敬みたいな敬愛?なんだと思うけど」
「……へぇ」
「俺と一つしか変わらないのに、あれだけのスキルがあること自体が凄いし。俺も大学時代は結構優等生な口だったけど、部長は遥か上を行ってるし」
「確かに、同世代であれだけの技術力は凄いですよね」
「半年前まで最大手の広告代理店にいたらしいんだけど、そこのシステム開発部って、エリート集団なんだよ。俺も就活の時に受けたけど、まぁ惨敗だったくらいだから」
「そうなんですね」
国分は山下の表情をじっと見据える。
「でも、もし付き合いたいとか考えてるなら、早めに行動に移した方がいいですよ」
「……それって、社長のこと?」
「はい」
「やっぱり、あの二人はそういう関係なのかなぁ」
「部長の口ぶりだと、まだ深い関係では無さそうですけど、相手が相手なので、そう遠くはないかと」
「……だよな」
山下は後頭部に手を当て、溜息を零した。
「部長、美人ですし、スタイルもいいですし、面倒見も良くて優しいですし」
「うん」
「それであれだけ仕事もできますし。外部業者の人も結構狙ってる人多いですし」
「……はぁ」
「部長自体が恋愛モードになってないというか、ラブ発信してないですし、受信機能も停止してるっぽいので、今はまだ大丈夫だと思いますけど、先のことは分からないですよね」
「ん」
「ちょっとしたきっかけで、スイッチが入ることもあるだろうし」
「……はぁぁ」
国分は山下を煽るように言葉を向けた。