鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「それでは、修正次第ご連絡差し上げます。何かありましたら、ご連絡下さい」
小一時間ほどの打ち合わせを終わらせ、栞那はノートPCを閉じた、その時。
「栞那、今夜、飯でもどう?」
「……ごめんなさい、仕事以外では会うつもりないです」
「……あの時はごめん。ずっと謝りたくて」
「……」
昔の凛々しい姿の面影すらなく、罪悪感からなのかほんの少しだけ弱々しく見える。
先輩とはサークルが同じで、私が二年の時に告白された。
見た目もさることながら、性格も落ち着いていて、結構人気があった。
そんな先輩からの告白に正直驚きもしたが、“お試しでもいいから”という言葉に流され、交際がスタート。
結構マメに連絡もしてくれて、一緒にいることが当たり前だと思えるほど、自分でも愛されていると思っていた。
けれど、付き合い始めて半年が過ぎた頃。
彼からの一方的な言葉にショックを受け、先輩との連絡を絶った。
「あの頃は就活に疲れ切ってて、栞那を労わる余裕が無かった」
「……」
「やっと内定を貰えた会社から、あの日、内定取り消しの連絡が来て、本当に心が荒んでて…」
確かにあの頃の先輩からは、追い詰められてる感じがひしひしと伝わって来てた。
高校時代にも付き合ってた人もいたから、先輩が初めてでは無かったけれど。
それでも、“恋愛”と呼べるような満たされた充実感は、先輩が初めてだった。
だから、余計に彼から言われた言葉に傷ついたんだ。
「本当に悪かったと思ってる。今さら俺からなんて、謝られても迷惑なだけだよな」
「……もう、過去のことです。先輩が気に留めるようなことではないですから。……忘れて下さい」
「っ……」