鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「おいっ、……栞那、大丈夫か?」
「ふぅ~~ッ、だ、だぃじょ~ぶですっ」
普段は飲んでもビール二缶くらい。
ワインでもグラス二杯くらいなのに。
仕事が多忙な上に、久しぶりに度数の高いお酒を飲み過ぎたかも。
体が火照り、息苦しい。
心地よい浮遊感のような、手足の感覚が麻痺しつつある。
ヤバい、帰らないと……。
座椅子から立ち上がろうとした、その時。
「んっ……」
「……一人で歩けないだろ」
耳元に落とされる優しい声音。
八年前の彼と重なる。
ふらつく体を支えるように抱き留められ、否応なしにドキッとしてしまった。
「栞那」
「……っ」
背中を支える手に力が込められ、ぎゅっと抱き締められる。
「やり直さないか?……やっぱり、栞那のこと忘れられなくて」
今さら何を言うの?
私を散々痛めつけて、この八年、誰も好きになれなかったのに。
「冗談は「冗談じゃないっ。栞那を失った穴は、他の女じゃ埋められなかった」
「っ……」
先輩の言葉に、心にスーッと冷気が差し込んだ。
私はこの八年、誰とも恋愛をしようだなんて思えなかったのに。
彼はこの八年の間に、他の女を欲したんだ。
「離して下さい」
「無理っ」
「離してっ……んっ……ンンッ」
彼の胸を押し返そうとした手を阻まれ、無理やり唇を奪われた。
強引で、私の気持ちなんて全く考えもしないで……。
「っんッ……っ……」
無理やり畳に組み敷かれ、ブラウスのボタンが外されてゆく。
「ゃぁっ……んッ…」
声を荒げようとすると容赦なく口を塞がれた。
「さ…わらっないでっ」
「いっっってぇぇッ…」
膝を思いきり立てて、太腿を蹴り上げた。
彼を押し退け、コートを手にして部屋を飛び出した、その時。
「きゃっ……」
「……成海?」