鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
自宅マンションに到着し、何故か一緒に車を降りた社長。
「三井、ここで待機してろ」
「承知しました」
車内でブラウスのボタンを留め、ジャケットのボタンもして。
コートのボタンもしっかり留めたけれど。
ニ十分ほど前の出来事は帳消しにはならない。
手首を掴まれ、マンションのエントランス内へと歩かされる。
「社長、……ここで大丈夫です」
「……俺が大丈夫じゃない」
「へ?」
「あんなの見せられて、大丈夫なわけないだろ」
「……」
それ、どういう意味ですか?
部下が襲われた現場を目撃したから?
それとも、下着姿になるのは社長以外の男性の前じゃダメだってこと?
そういう契約内容だっただろうか?
無言でエレベーターに乗り、自宅玄関前に到着してしまった。
「携帯出せ」
「え?」
「いいから、出せ」
言われたままに、鞄から携帯電話を取り出すと。
「これ、解除して」
「……あ、はい」
顔認証でロックを解除すると、手早く通信アプリでの登録と、私のスマホから社長のスマホに発信が……。
「それ、俺の番号」
「っ……」
「用がなくても、かけていいから」
「へ?」
「家に着いたら連絡する」
「……ッ?!」
い、……今、キスされた?
前髪越しだけれど、今、おでこにチューされたよね?!
「ちゃんと鍵閉めろよ?」
「っっ……」
ふわっと優しい笑みを浮かべた社長は、頭を一撫でしてその場を後にした。
なっ、……何が起きたの??
へなへなっとその場にへたり込んだ栞那は、異常な速さで脈打つ胸元をぎゅっと握りしめた。