鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される


「部長、パッチ(プログラムの修正や機能変更を行うデータのこと)当てたんですけど、チェックして貰えますか?」
「ごめんね~、十分だけ待ってくれる?」
「あ、はい。じゃあ、煙草吸って来ます」
「はーい」

国分さんが席を外した。
秘書課から急ぎの依頼を受けそれを処理し、栞那はそれの最終チェックをしている。
秘書が就くのは重役以上。
だから必然的に、秘書からの依頼は先送りの出来ない重要案件だ。

修正処理を終え、秘書課に向かう。

「失礼します」

秘書課のドアをくぐると、専務秘書の真壁(まかべ) 千穂(ちほ) 三十歳と三井さんがいた。

「三井さん、ご依頼の修正、完了しました。ご確認をお願いします」
「もう出来たんですか?」
「あ、はい」
「助かります」
「三井さん、珈琲でいいですか?」
「お願いします」

秘書課のパソコンに自身のIDでログインし、修正した箇所を立ち上げる。
真壁さんは気を利かせて、珈琲を淹れに行ってくれたようだ。

「ここが少し見づらかったのと、ここは処理速度を上げて、……ここからダイレクトに管理機能に移行できるようにしました。それから、ここは依頼が無かったんですけど過去の行事記録を一覧で纏めて、この右上のタブからは秘書課のスタッフ同士でスケジュール管理ができるように組み込んでおきました」
「おぉ、流石ですね」
「ッ?!……いえ、これくらい何てことないですよ」

初めて見たかもしれない。
三井さんが目を輝かせて、真剣な表情になっているのを。

いつものクールな表情からは想像できなほど、嬉しそうな顔にドキッとしてしまった。

「取り込み中のところ、悪いな」

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