鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
いつものようにリビングに通されコートを脱ぐと、何故かYシャツ姿になった社長がキッチンに立っている。
「あの、社長」
「ん?」
「もしかして、社長自ら作ろうとなさってませんか?」
「……そのまさかだか、何か問題が?」
「つ、作れるんですかッ?!」
「心外だな」
「あ、……すみません」
「これでも、一人暮らしは長い。ある程度のものながら大概作れる」
「……そうなんですね」
意外だ。
いつも洗練されたお店にばかり連れて行かれるから、ご自宅で食べるとしても、お手伝いさんのような人か、シェフのような人が作るとばかり思っていた。
ネクタイを外し、Yシャツのボタンを二つ外して、腕まくりまでしている。
前腕の筋肉が浮き立ち、意外にも筋肉があるんだなぁと、ドキッとしてしまった。
「手伝いましょうか?」
「じゃあ、野菜を洗ってくれるか」
「はい」
用意された野菜を洗っていると、冷蔵庫から取り出した食材を手際よく形にしてゆく社長。
本当に大概のものなら作れるようだ。
というより、私よりも料理スキルはあるんじゃないだろうか?
システム工学に打ち込むばかりに、女子力と言われるようなスキルを後回しにして来た。
メイク、お洒落、家事全般……色気、恋愛。
その結果、仕事には恵まれたが、人生を謳歌してるか?と聞かれたら、たぶん微妙だ。
「味見してくれ」
「っ……はい」
ティースプーンに乗せられたソースのようなタレ的なものの味をみる。
「おっ、美味しいですっ!!」
「それは良かった」
「っっっ~~」