鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
シンクにあった野菜を洗い、使い終わった調理器具を洗っている間に、いつの間にか白身魚をムニエルっぽく焼き上げたみたいで。
それに合うソースの味見を頼まれたが……。
あまりの完成度にプロのシェフなのでは?と勘違いしそうだ。
生クリームベースのソースに仄かに柑橘の爽やかな香りがする。
滑らかで優しくて、お魚だけでなく、お肉でもサラダでもいけそうなソース。
「ワインとシャンパンなら、どっちがいい?」
盛り付けられたお皿をダイニングに並べていると、カウンター越しに声がかかった。
「明日は休みだし、少しくらいいいだろ」
「……はい」
「で、どっち?」
「どちらでも」
「じゃあ、ワインにするか」
ブルゴーニュ型の丸みがあるワイングラスに注がれるシャルドネ。
クリーム系のコクのある白身魚に合う白ワインだ。
「お酒は、お強いんですか?」
「ん~、接待で酔い潰れない程度には飲めるな」
「フフッ、さすがです」
「べろべろに酔い潰れてたら、カッコ悪いだろ」
向かい合う形でテーブルに着き、手をあわせてお料理を頂く。
「食べれないものとか、あったか?」
「いえ、好き嫌いないですし、アレルギーも無いので」
「そうか」
「社長は?」
「俺もない………と言いたいところだが、茄子が苦手だ」
「茄子?」
「あぁ、食べれないわけじゃないが、あのくったりした感じが苦手で」
「えぇ~、あれがいいんじゃないですか!味がしみるし、蕩ける感じが」
「そうらしいな」
子供みたいな理由に、ほんの少し親近感が湧く。