鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

陰りのある表情はそれが原因だったんだ。
でも、それを克服しなくちゃ、男性を前に振る舞うなんてできないだろうに。

「凄いね、国分さんは」
「……凄くなんかないですよ」
「凄いよ。私だったら、男性恐怖症になりそうだもの」
「一時は私も男性恐怖症でしたよ。……幼馴染の男の子がいるんですけど、その子が、ずっと支えてくれて」
「その子とは恋愛に発展しなかった?」
「……当時は彼女持ちだったんで」
「あぁ…」
「今はフリーなんで、ボーイフレンドの一人ですけど」
「そういう子は貴重だよね」
「はい。しかも、初恋の子なんですよ、彼」
「……そっか」

きっと当時その彼がフリーだったら、恋愛に発展して、今の国分さんとは少し違った未来になってたんじゃないかな。
恋愛なんてタイミングが合わなければ、何の意味もない。
それが運命だというのなら、きっと私と先輩は縁がなかっただけ。
もしかしたら、国分さんとその男の子のタイミングは、これからなのかもしれない。
こればかりは本当に巡り合わせなんだと思う。

「やっぱり、部長とは話しやすいです」
「そう?」
「はい」

同じ匂いがするのかな?
恋愛に不器用なところが。

「部長、山下さんのこと、どう思います?」
「山下くん?」
「はい」
「うーん、……優しくて気が利くし、仕事もできるからモテそうだよね」
「結構好印象なんですね」
「……そうだね」
「じゃあ、社長と山下さんなら、どっちが好みのタイプに近いですか?」
「へ?」
「山下さん、お薦めですよ」
「えっ…」
「でも、たぶん……社長みたいなタイプじゃないと、部長はときめかなそうですよね」

< 69 / 156 >

この作品をシェア

pagetop