鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
独自のWebサイトをリニューアルし、次々と新商品が発売され、人気モデルとのコラボ企画や期間限定のキャンペーン、通信販売の管理、新CMの動画情報、SEO対策等、次から次へとシステム上に組み込む案件が山積みの状態。
更には、モニター応募やアンケートなど常に変動する情報処理に加え、協賛している映画やドラマなどの情報も常時組み込まなければならない。
企画課が次々と新プロジェクトを進める一方で、コンテンツの充実性を図りながら、クオリティと処理能力の均衡維持するのは結構きつい。
時間があれば幾らだって対応可能だが、我が社のイケメン社長は気が短いらしい。
いつだって納期が極端に短い。
「はぁ…、もう少しやってから帰るか」
指先を目頭に当て、少し揉む。
気休めにしかならないのは分かっていても、やっぱり目の疲労感が一番きつい。
「もう少しサーバーの容量欲しいなぁ。来週時間つくって、土台からアップするか」
手帳を広げ、案件の納期を確認していた、その時。
視界の片隅に人影を感じた。
「社長、何か御用ですか?」
入口の壁に凭れるようにして、腕組した社長が立っている。
濃紺の細身の三つ揃えを嫌味なく着こなし、軽くアレンジされた前髪から覗く瞳は、色気を感じさせるほど妖艶で。
「納期に間に合いそうもないのか?」
「っ……いえ、大丈夫です」
納期が遅れようものなら鬼雷が落ちると噂に聞く。
システム部に配属されてから、これまで一度も納期を遅らせたことがない。
ヘッドハンティングされたという自負がある。
高校時代から男性の中で培って来た技術だ。
うら若き乙女の青春時代を放棄してでも手に入れたかった専門スキル。
「俺が納得するクオリティで頼むな」
「っ……」