鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

翌日。
昨夜はあの後、日付が変わる頃まで国分さんと話して、久しぶりにストレス発散できた。

「部長、二日酔い大丈夫ですか?」
「あ、うん。話とつまみが中心だったから、そんなに飲んでないよ。国分さんは?」
「私ザルなんで、全然平気です」
「そうなの?!」
「はい。なので、いつでも付き合いますんで」
「わぁ、心強い」
「一応、もしやと思って買って来たので、良かったらどうぞ」
「ありがと」
「私の方こそ、奢って頂いて……ご馳走様でした」
「どう致しまして」

デスクの上に二日酔い用のドリンクが置かれた。

「えぇ~っ、二人で飲みに行ったんですか~?私も誘ってくれたらよかったのに~」
「あーごめんね、今度誘うよ」
「約束ですよ~?」

たまたま通りがかった近藤さんにバレてしまった。
社交辞令で相槌したが、国分さんは近藤さんが苦手みたい。
すかさず煙草を手にして喫煙室へと行ってしまった。

個性ある部下を束ねるのも苦労する。



翌日が仕事納めということもあって、年始休暇中の初売りセールの担当者会議に出席している栞那。
久しぶりに社長を目にした。

二十人ほどが参加している会議だから、社長との距離は結構ある。
対角線上に位置する栞那は、視界の隅に伊織の姿をさりげなく捉えていた。

「では、休暇中も緊急時の連絡がつくようにしておいてくれ。会議はここまでとする」

およそ二時間の会議が終わり、社長を筆頭に次々と社員が会議室を後にする。

「山下くん、ごめん。ちょっと思いついたのがあるから、忘れないうちにそれいじるから、先に戻ってて」
「……分かりました」

会議に同席した山下を戻らせ、栞那は会議中に思いついた処理を早速取りかかることにした。

「成海さん、すみません。少しお時間宜しいでしょうか?」

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