鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「冷蔵庫の中にあった傷んでる食材、全部処分しましたよ?」
「悪かったな、手間取らせて」
「適当に食材買って入れておいたので、美味しい朝食を作ってくれますよね?」
「フッ、お望みであれば」
「目玉焼きなら半熟、パンは外カリッ、中もっちりが好みです」
「細かいな」
「ドレッシングはノンオイルで。珈琲は酸味が少なく、薄めが好きです」
「はいはい」
「後は~」
「まだあるのか?」
調理台に凭れかかる伊織の隣りに凭れ、栞那はゆっくりと視線を伊織へと向けた。
「外見じゃなくて、中身を好きになってくれる人じゃないと無理なんです、私」
「……知ってる」
「私のどこが?見た目ですか?それとも、スキル?性格は面倒くさいタイプですけど?」
「愚問だ」
コトッと缶ビールが調理台に置かれた。
そして、伊織の長い腕が栞那の腰に回され、そっと抱き寄せる。
「俺の目測に狂いはない」
指先が顎を持ち上げ、アルコールがかった息がかかり、二人の唇が重なった。
優しく啄まれるキスは甘い痺れをもたらし、“開けろ”と容赦なく舌先でなぞられる。
腰に回されていた手が、カシミアのセーターの裾から滑り込み背中を這い上がる。
執拗に啄められ、甘噛みされ、容赦なく攻めて来るキスに呑まれ、僅かに唇を緩めると。
“漸く観念したか”と、すかさず伊織の舌先が滑り込んで来た。
艶めかしく漏れ出す吐息。
優しく彷徨う指先。
熱く求める伊織のキスに、次第に栞那の体の力が抜けてゆく。
ふわふわとした感覚に陥った栞那の耳元に伊織はそっと囁きかける。
「その気になってるところ悪いが、今日はここまでだ」
「なっっっってませんよッ!」
クククッと喉を鳴らす伊織は栞那の首筋にチュ~ッと吸い付き、部屋へと行ってしまった。
「キスマーク付けるなら、見えないところにしてよね」