鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

俺が初めてだったらよかったのに。
彼女に触れる男が、俺だけだったら……。

過去の男に嫉妬したところでどうにもならないことくらい分かってる。
自分だって、初めてなわけじゃない。
それが無性に腹立って。
過去に戻れるなら、時間を巻き戻せるなら……。
刻む時間全てを彼女のために費やせたらいいのに。

「見せろ」

固く握られる拳を徐々に開かせるように指先を解いて。
君以外に欲しいものなんて、何もないから。

「俺だけに」

過去の男たちが何人いようが。
その男どもが、君の体の隅々まで触れていようが。
これから先は、一分一秒たりとも誰にも渡さない。

俺だけを感じて。
俺だけが触れられる存在であって欲しいから。

「栞那」
「っ……」

半年もてばいいと言われていたあの頃から二十年。
君にこうして逢えたことが奇跡なら。
これから訪れる全ての時間は、君がもたらした奇跡の時間だ。
俺に生きる意欲をもらたしてくれた、君の笑顔に。

色白の肌も。
華奢な肩も。
ふくよかな胸も。
俺の瞳に映る全てが愛おしくて。

君に焦がれて胸が熱くて苦しい。
触れるだけのキスではもう抑えきれない。

躊躇いがちな彼女の舌を絡め取り、溢れ出す想いが伝わるように。
寝室に艶めかしい吐息が淫らに響く。

震え気味だった彼女の体が徐々に解けて、俺に委ねるように絡まる指先に力が籠る。

親指の腹で濡れそぼった下唇を優しく撫でる。

「もっとして欲しそうだな」
「っっ」

“もっと”と強請るような顔をしてる。
とろんと蕩けた表情が、何とも言えないほどに煽情的で。

「もっと煽れ、……俺だけに欲情しろ」

下着の縁をなぞるように。
視線も唇も、吐息さえもゆっくりと―――。

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