鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
*
仕事を終え、伊織のマンションに戻った二人。
結局気を利かせてくれたのか、山下は二人の関係を誰にも漏らさなかった。
「腹減っただろ」
「何作ってくれたの?」
「ロールキャベツ」
「うっわぁ!ロールキャベツ大好物!!」
「知ってる」
「え?」
「この間、テレビでやってた料理番組観ながら、凄く食べたそうにしてたから」
「あっ…」
「食べたいものがあるなら、遠慮なく言っていいからな」
「できた彼氏ですこと」
「いつ、できた旦那に昇格するの?」
「っ……」
「ま、いいけど。気長に待つから」
伊織は鍋を温め始め、食器戸棚から必要な皿を取り出す。
そんな伊織に栞那は背後からぎゅっと抱きついた。
「そんなに結婚したいの?」
「ん」
「後悔しない?」
「しない」
「私、本当に料理とか片付けとか苦手だよ?」
「俺はそういうことして欲しくて結婚したいわけじゃない」
伊織は体を反転させて、栞那を見下ろす。
「本当は結婚という形に拘ってるわけじゃない。毎日一緒に食事をして、寝る時も起きた時も隣りにいてくれたらそれでいいんだけど」
「……ん」
「だけど、家族でしかできないこともあるから」
「ん」
「その特権は、栞那に全てあげたいと思ってる」
家族でしかできない特権だなんて、限られてる。
命や財産に関することだ。
幼い頃から家族の愛情に乏しかった彼だから、そう考えるのだろうか。
まだ三十一歳だというのに。
「じゃあ、私の特権もいっくんにあげないとね」
「え?………えっ?!」
「そんなに驚くことなの?」
「驚くだろっ!ってか、それって、プロポーズの返答だと見做していいんだよな?」
「……だったら、どうするの?」
「っっっ」
「きゃっ………ンッっっっ」
伊織は手にしている皿を調理台に置き、思いっきり栞那を抱き締めた。
仕事を終え、伊織のマンションに戻った二人。
結局気を利かせてくれたのか、山下は二人の関係を誰にも漏らさなかった。
「腹減っただろ」
「何作ってくれたの?」
「ロールキャベツ」
「うっわぁ!ロールキャベツ大好物!!」
「知ってる」
「え?」
「この間、テレビでやってた料理番組観ながら、凄く食べたそうにしてたから」
「あっ…」
「食べたいものがあるなら、遠慮なく言っていいからな」
「できた彼氏ですこと」
「いつ、できた旦那に昇格するの?」
「っ……」
「ま、いいけど。気長に待つから」
伊織は鍋を温め始め、食器戸棚から必要な皿を取り出す。
そんな伊織に栞那は背後からぎゅっと抱きついた。
「そんなに結婚したいの?」
「ん」
「後悔しない?」
「しない」
「私、本当に料理とか片付けとか苦手だよ?」
「俺はそういうことして欲しくて結婚したいわけじゃない」
伊織は体を反転させて、栞那を見下ろす。
「本当は結婚という形に拘ってるわけじゃない。毎日一緒に食事をして、寝る時も起きた時も隣りにいてくれたらそれでいいんだけど」
「……ん」
「だけど、家族でしかできないこともあるから」
「ん」
「その特権は、栞那に全てあげたいと思ってる」
家族でしかできない特権だなんて、限られてる。
命や財産に関することだ。
幼い頃から家族の愛情に乏しかった彼だから、そう考えるのだろうか。
まだ三十一歳だというのに。
「じゃあ、私の特権もいっくんにあげないとね」
「え?………えっ?!」
「そんなに驚くことなの?」
「驚くだろっ!ってか、それって、プロポーズの返答だと見做していいんだよな?」
「……だったら、どうするの?」
「っっっ」
「きゃっ………ンッっっっ」
伊織は手にしている皿を調理台に置き、思いっきり栞那を抱き締めた。