クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
確定申告の書類が次々に集まる中、事務所の移転や法人化の事で、広大さんとは職場で話す事が、殆ど無い。
ご飯は外で食べてくる日が多く、遅く帰ってくる広大さん。
離れている時も、こんなに忙しい毎日を過ごしていたんだ。

夜、先に寝てしまって、話す事無く朝を迎えるけど、前みたいに寂しくはない。
一緒に住む家に帰って、広大さんを感じることが出来る。家事をしているだけでも、凄く幸せになる。
後は、もっと仕事で広大さんの力になれるように、頑張らないと。

家では広大さんが居ない間、ずっと勉強していた。
安藤さんや石井さんに教えて貰ったことを、自分なりに調べて、分からない事を明くる日に、石井さんに教えて貰った。

「石井さん。昨日教えて貰ったことなんですけど、ここの文章が理解出来なくて、教えて貰えますか」
「あぁ、ここですね。どうして法の言葉って、こんなに解釈しにくいんでしょうね。いつも僕も悩みますよ」
「石井さんでもそうなんですか?」
「はい。だから、何度も読んでいる間に、だからどうなんだ!って余計分からなくなる時もありました」
私は、その時の石井さんを想像して、思わず吹き出してしまった。

毎日、石井さんとそんな会話をしながら、自分のスキルが上がっていくのを楽しんでいる。
どんどんスキルを上げて、広大さんをびっくりさせたい。

ある日、事務所ですれ違った広大さんに、声を掛けられた。
「碧。石井君と楽しそうだね」
「はいっ、とても楽しいです。毎日ワクワクしてます」
「そうか・・・」
広大さんは私を見ず、手元の資料を見ながら、そのまま部屋に入って行った。
凄く機嫌悪い。難しい仕事なのかなぁ。
私は気に留めず、自分の席に戻って、仕事に集中した。
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